SAPのEnterprise Structure(エンタープライズ構造)は、企業の組織構造をシステム上で定義し、ビジネスプロセスを効果的に管理するための基盤を提供します。このセクションでは、SAPの主要なエンタープライズ構造要素について、各要素の関係性を明確にしながら説明します。
1. Company Code(会社コード)
Company Codeは、財務会計(FI)モジュールの基本的な組織単位です。会社コードは、個別の法的実体として扱われ、財務報告書を作成するための単位となります。各会社コードは、独自の会計帳簿を持ち、バランスシートや損益計算書などの財務報告を行います。
特徴:
- 独立した財務報告が可能
- 各国の法的要件に対応
- 一つのSAPシステムに複数の会社コードを設定可能
2. Plant(プラント)
Plantは、物理的または論理的な生産・物流拠点を表します。製造、保管、販売、配送などの機能を持つ拠点を定義します。プラントは、SAPの様々なモジュール(MM、PP、SDなど)で使用されます。
特徴:
- 生産拠点、倉庫、サービスセンターなどを表す
- 物品の在庫管理、購買、販売の管理を行う
- 一つの会社コードに複数のプラントを設定可能
3. Storage Location(保管場所)
Storage Locationは、プラント内の物品の在庫を細かく管理するための単位です。特定の場所での在庫数量や在庫価値を管理するために使用されます。
特徴:
- プラント内の具体的な保管エリアを表す
- 在庫の細かい管理と追跡が可能
- 一つのプラントに複数の保管場所を設定可能
- 独立して登録はできず、必ずプラントに関連付けられる
4. Purchase Organization(購買組織)
Purchase Organizationは、購買活動を管理するための組織単位です。購買組織は、供給業者との取引条件を交渉し、購買契約を管理します。
特徴:
- 購買契約や取引条件の交渉を担当
- 一つの会社コードまたは複数の会社コードに対して設定可能
- 中央集権的、分権的、またはマトリックス形式の購買組織を設定可能
5. Purchase Group(購買グループ)
Purchase Groupは、購買活動を実行する責任を持つ個人またはグループを表します。購買グループは、特定の品目や供給業者に対する購買業務を担当します。
特徴:
- 購買要求や発注の処理を担当
- 特定の製品カテゴリや供給業者に対応
- 購買活動の分析や報告に使用される
各要素の関係性
SAPのEnterprise Structureでは、各要素が階層的に関連付けられています。具体的には、会社コード(Company Code)が最上位に位置し、その下に複数のプラント(Plant)が紐づけられます。各プラント(Plant)の中には、さらに複数の保管場所(Storage Location)が存在し、物品の詳細な在庫管理を行います。
Purchase Organizationは、Company Codeに関連付けられ、複数のCompany Codeを管理することも可能です。Purchase Groupは、具体的な購買活動を担当する単位として、Purchase Organizationの下に位置します。
このように、SAPのEnterprise Structureは、各組織単位が相互に連携し、企業全体のビジネスプロセスを効率的に管理するための枠組みを提供します。各要素の適切な設定と管理が、システム全体の効率性と透明性を向上させる鍵となります。
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